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そんな折、テレビで動物園からチンパンジーが脱走したことを報道していた。
メスの老齢のチンパンジーだった。
親父はその報道を見たあと、姿をくらました。
幾ら経っても帰宅しない親父は、唯一の血縁と言うこの言葉と、同じ苦しみを背負って生きてきた同志という点でも、オレは親父が帰ってくるまで待たなくてはならない使命感にとらわれた。
それでも、1年が過ぎ2年が過ぎた。
まだ、帰ってこない。
なにがいけなかったんだろうと、オレは自分を責めた、責めても責めても蒸発した親父は姿を現さなかった。
それから5年という歳月が経ち、テレビの報道で、5年前脱走した老齢のメスのチンパンジーが、こちらも老齢のオスのチンパンジーと共に園舎に帰ってきたという報道を受けた。
親父がいなくなってから、人から伝え聞いたことを思い出した。
ちょうど動物園が出来たあたりから、おふくろがいなくなったということを…。
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