8.花火

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「私はもう、森田さんには会えないと思ってましたから。そんな資格も、合わせる顔もないと思って」  ぞくり、と嫌な予感が背筋を駆け抜けた。  菜々がこの間の話を引きずっているのはわかる。でも、もう会えないとか、資格もないなんて、いくら何でもいきなり飛躍し過ぎじゃないだろうか。  怪しいのは、閉ざされた部屋の中だ。  まさか……想像もしたくないけれど、まだ秀一が残っていたりするんじゃないだろうな。あれからまた、菜々の部屋に転がり込んでいるとか。 「……部屋に誰か、隠してんの?」 「えっ」 「菜々ちゃんごめん、開けるよ」 「ちょっ、森田さん! 駄目です!」  俺は菜々を押しのけるようにして、ドアを開けた。  そこにあったのは山積みになった大量の段ボール箱と―― 「あんたって、マジ最っ低」  軽蔑の目で俺を見る、有純だった。  頭の整理がつかず、混乱に襲われる。  この段ボールの山は? どうしてここに有純がいる? 一体何が起こってるんだ? 「嫌がる事はしないって言ってたんじゃなかったの? 駄目だって言ってんのに無理やり入って来るとか、ホント信じられない。どの口が言ってるんだか」 「あ、有純……」  あまりにも意表を突かれて、俺は金魚のように口をぱくぱくさせる事しかできなかった。 「何から説明していいか難しいけど、一つだけはっきりしてるのは、あんたが不甲斐ないから菜々ちゃんはとっても傷ついてるって事。ホント幻滅したわ。あんたって、女の子を悲しませる事しかできないわけ? こんな事になるなら一生女嫌いでいなさいよ」  あまりにも遠慮のない言葉が、鋭利な刃物のように俺の胸にグサグサと突き刺さった。
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