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「私はもう、森田さんには会えないと思ってましたから。そんな資格も、合わせる顔もないと思って」
ぞくり、と嫌な予感が背筋を駆け抜けた。
菜々がこの間の話を引きずっているのはわかる。でも、もう会えないとか、資格もないなんて、いくら何でもいきなり飛躍し過ぎじゃないだろうか。
怪しいのは、閉ざされた部屋の中だ。
まさか……想像もしたくないけれど、まだ秀一が残っていたりするんじゃないだろうな。あれからまた、菜々の部屋に転がり込んでいるとか。
「……部屋に誰か、隠してんの?」
「えっ」
「菜々ちゃんごめん、開けるよ」
「ちょっ、森田さん! 駄目です!」
俺は菜々を押しのけるようにして、ドアを開けた。
そこにあったのは山積みになった大量の段ボール箱と――
「あんたって、マジ最っ低」
軽蔑の目で俺を見る、有純だった。
頭の整理がつかず、混乱に襲われる。
この段ボールの山は? どうしてここに有純がいる? 一体何が起こってるんだ?
「嫌がる事はしないって言ってたんじゃなかったの? 駄目だって言ってんのに無理やり入って来るとか、ホント信じられない。どの口が言ってるんだか」
「あ、有純……」
あまりにも意表を突かれて、俺は金魚のように口をぱくぱくさせる事しかできなかった。
「何から説明していいか難しいけど、一つだけはっきりしてるのは、あんたが不甲斐ないから菜々ちゃんはとっても傷ついてるって事。ホント幻滅したわ。あんたって、女の子を悲しませる事しかできないわけ? こんな事になるなら一生女嫌いでいなさいよ」
あまりにも遠慮のない言葉が、鋭利な刃物のように俺の胸にグサグサと突き刺さった。
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