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「朝から何言ってんのよ、一年坊主の癖に」
「その一年坊主が終わる頃には、有純ちゃん達はいなくなっちゃうからね」
消え入りそうな声で、顔を真っ赤にして俯く雄介に、珍しく有純の頬にも赤みが差した。おーおー、相変わらずこいつ、見た目に似合わず積極的だな。前言撤回。この調子で有純のペースをかく乱できるなら、壁を壊す日もそう遠くないかもしれない。
「そうね。やっと雄君の受験が終わったと思ったら、今度はあたし達が受験か。あーやだやだ。高校受験だってこの間終わったばかりなのに」
照れ隠しのつもりか、有純はさらっと話題を差し替えた。
「どうせお前は音大行くんだろ? 推薦取れるんじゃねえの?」
「まぁね。幸太は? あんたの場合、そもそも進学するかどうかの話でしょ」
「あーうん、まぁ……一応考えてなくはないんだけど。専門行こうかと思って」
「専門? へぇー、何かやりたい事でもできたわけ? 珍しいじゃん」
「やりたい事っつーかその、調理師学校、なんだけどな」
一瞬目を丸くした有純の顔が、見る見るうちににやけ顔に変わる。
「なーんだ。自由軒、継ぐつもりになったの? いいじゃないいいじゃない。秘伝の焼肉定食は誰かが受け継いでいかないとね。あんたがそのつもりなら、あたし達絶対応援するよ」
「そんなんじゃねーって。俺ができるのって料理ぐらいだから、そっちの道に進むのが一番いいのかなって思っただけで。料理人になるとしてもあんな小汚い定食屋なんかじゃなくて、イタリアンとかフレンチとか、同じ和食でも高級料亭の板前みたいなカッコいい方目指すに決まってんだろ」
「カッコつけなくても大丈夫よ。どうせあんたは自分中心になんて物事考えられないんだから、最終的にはおじさんとおばさんが喜ぶ道を選ぶに決まってるじゃない」
訳知り顔にうんうんと頷き、一人合点する有純。勝手に言ってろ。
「……で、菜々ちゃんは? 進路の事なんて考えてんの?」
「うん。私は経営学部に行こうかなぁって思って」
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