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「……一応聞くけど、行先は大丈夫? 乗る電車とか、ホームはわかってるんだよね?」
「あ、えっと……日暮学園駅というところまで行くんです。だから多分、上り? 列車に乗らなくちゃいけなくて、上りって事はええと、多分こっちが南でこっちが東だから……」
案の定のあやふやな受け答えに、俺はため息をついた。
「上り列車はそこの階段から連絡通路を向こう側に渡った三番線だよ。ついさっき電車出ちゃったけど、また十分ぐらいで次が来るはずだから」
「そうなんですね、ありがとうございます。何からなにまですみません」
「次から気を付けてね。ホームは三番線と四番線が並んでるから、反対側に乗っちゃだめだよ。三番線だから」
「はい!」
元気よく返事をし、満面の笑みで手を振りながら、彼女は小走りで階段を駆け上がっていった。
彼女を見送った後、カップラーメンが出来上がるぐらいたっぷりと時間をおいて、俺もまた連絡通路へと足を進める。実のところ、俺の目的地もまた彼女と同じ――というよりも、駅名である日暮学園こそが俺の通う高校なのだ。
駅名を聞いた時にはドキッとしたものの、このまま知らない女の子と仲良く電車に揺られたいと思うほど俺は女という生き物に心を許す気にはなれなかった。むしろ迷惑この上ない。
彼女がなかなか可愛らしい子だったとしても、だ。
他のやつはいざ知らないが、俺の高校生活に女などというものは不要なのである。
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