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1.女嫌い
高校二年の春が始まる。
入学の時に比べれば、進級はさして新鮮味もない。真新しい制服やバッグに身を包み、緊張を隠せない新一年生を見て懐かしを感じるぐらいには、俺達は高校生活に慣れきってしまっていた。
それでもなんとなくうきうきと落ち着かない気持ちになるのは、満開に咲く桜のせいだろうか。それともただ、イベント事になると無駄にテンションが上がってしまうガキ臭さが抜け切っていないだけか。
始業式のその日、俺はいつもと同じようにぎりぎりに起き出し、ダッシュで駅へ向かっていた。緊張感も緩みすぎると、毎日のように時間に追われる生活を送る羽目になる。
人波をかき分け、自動改札機のリーダーにスマホをかざし、フラップドアを押しのけるようにして駆け抜け……ようとした瞬間、目の前に立ち塞がる人間に気づいて慌てて急ブレーキ。すんでのところで衝突を避ける。
「あっぶねぇ、何を……」
もたもたしてんだ、と罵倒しかけた言葉を思わず飲み込む。
うまく機械が読み込んでくれないのか、一人の小柄な女の子が改札を通れずに立ち往生してるのだった。
ICカードを何度押し当てても、表示されるのは赤ランプとエラーメッセージばかり。
女の子は顔を真っ赤にして、あたふたと気の毒なぐらい慌てている。普段ならちょっとすいません、と声をかけて先に行かせてもらうところだが、たまたまエラーメッセージに目をやった俺は、目が点になった。
残高不足。
おいおい。いくらなんでも気づくだろ、フツー。
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