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だが、どうやらそう考えていたのはアリアだけだったらしい。そういうわけにはいかないでしょうに、と母上はため息交じりに言ったのだった。
「大国・アウストローラの女王がまさかの未婚だなんて。そんな恥ずかしいこと、できるわけがないでしょう。ただでさえ、残念な噂が流れて初めていて、こちとらもみ消すので必死だというのに」
「残念な噂?」
「まさか、気づいてなかったの?既に町では広まり始めてるのよ。“アウストローラの王女様は、性格があまりに残念すぎるせいでまったく男にモテないし、婚約者がちっとも決まらない”って。ああ、これが根も葉もない噂だったらどれほど良かったことか」
え、ちょっと待って?
アリアは口をぽかん、と開ける羽目になった。婚約者がちっとも決まらない、のは事実だ。けれどそれは相手の男が悪いからであって、自分の性格が残念なせいではない。というか、こーんなに美人な自分がモテないなんてそんなことあるはずがないではないか!
「お、お、お母様!根も葉もない噂じゃないですか、ねえ!そ、それが本当だなんてまさか思ってらっしゃいませんよね、ね!?」
慌ててそう尋ねると、両親は顔を見合わせて、なんとダブルでため息をついてしまった。
「まさか、自覚なかったのか、アリア……」
げっそりした顔でこっちを見る父上。
「いや、お見合いの時のお前の質疑応答見てたらそりゃ普通の男はみんな逃げるぞ。だってそうだろ、お前ときたら……こうだ。“ご趣味は?”」
「“無能な男を罵倒してしばき倒すこと”」
「“夫に求めることは?”」
「“自分の命令を忠実に聴いて立派にコキ使われること”」
「“好きなタイプは?”」
「“自分のことを褒めてくれて自分のことを認めてくれて自分のことを否定しないでくれて自分の奴隷であることをきっちり理解してくれて、ついでにイケメンで長身で自分の邪魔しない程度に頭が良くていざという時に命かけて自分のことを守って邪魔にならないように死んでくれるタイプ”」
「“好きな料理は?”」
「“その日の気分によって変わるので、自分の気分を察して届けてくれる最高の料理ならなんでも”」
「“嫌いなものは?”」
「“ブサイクと無能”」
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