7人が本棚に入れています
本棚に追加
/119ページ
<1・王女、異世界転移する。>
――何よ、この窮屈な空間はぁぁぁ!
わなわな、と膝の上で手を震わせる女が一人。ずらりと規則正しく並んだ机。教師のやけに眠たくなるような声、チョークが黒板をかりかりと引っ掻く音、その様子を黙って見つめてノートにメモを取る制服姿の高校生達――。
ここはそう、とある高校の教室。現在は、授業中。苛立ちを募らせる自分もまた、その高校に通う生徒の一人である。一応、そういうことにはなっている。
だが、その実態は。
――一時間以上、こうやって密な空間で、眠くなるような退屈な教師の話を聴いて、これで何で勉強がはかどるってのよ!?あんたら、実は先生じゃなくて、催眠術師の間違いじゃないの!?
何故、自分はこんなところで、こんなつまらない授業を受けているのだろう。
アウストローラ王国の跡継ぎたる、王女の自分が。
頭脳明晰、運動神経抜群、魔法と武術の天才にして、類まれなる美貌を持つこの自分が。
どうしてこんな、異世界“地球”の人間のフリをして、高校なんぞに通わなくてはいけないのか。
――眠い……超絶に眠いわ。この、アウストローラ王国の王女たる、このわたくしが……っ!
アリア・ル・アウストローラ。
とある異世界の大国、その跡継ぎである姫がこんなところにいる理由は――今から一週間ほど前に遡ることになる。
最初のコメントを投稿しよう!