49人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
その1
“人生の交差点 はぐれても君を見つけ出すよ あいた助手席に座るのは君だからね”
フロアに流れているのが、井口一彦の“14時05分”だと気づいて、気だるい気持ちは一瞬で吹き飛んだ。
ワタシは寄りかかっていた壁際を離れ、足早にDJブースの方へ向かう。
この曲がリリースされたのは、2年くらい前。だけど、井口の歌声は否応なしに、ワタシをあの時代に戻してくれる。
ずっとずっと、ライヴハウスにへばりつくようにして生きてきて、この場所で井口の歌を聴いたことなんて、今まで一度だってなかった。
今夜のDJなんて、気にしてなかったけど。
どんな人なんだろう。
人ごみをすり抜けるように、ライヴハウスの中を移動するワタシ。
こんな短い距離なのに、頭の中で、いろんなことが駆け巡っている。
それでも、たどり着く先は、たった一人のことだけ。
最初のコメントを投稿しよう!