転校生

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そしてあたしは柊真、ヒナは遊星に惹かれて行った。 女子2人で遊ぶときには必ず遊星や柊真の話題になり、自分が好きになった男がどれだけ素敵な人なのか語り合った。 ヒナが春休み中にダイエットをしたのは、言うまでもなく、遊星に気にかけてもらうためだった。 それは必然的にヒナ自身のためということになる。 ホームルームで新しい担任の話を聞きながらもあたしは小さな手鏡を取り出し、その中に映る柊真の姿をボンヤリと見つめる。 どうして席順の一番最初ってあいうえお順なんだろう。 あたしの苗字は相沢だから、ほとんどの場合が教室の右端の一番前になってしまうのだ。 この席から柊真の姿を見ようとしたら鏡を使う以外に方法がない。 なにせ同じ列の4番目が柊真の席なのだ。 あたしの席の後ろはなぜかひとつ開いていて、その後ろに女子生徒が座っている。 その女子生徒が動く度に柊真の姿が見え隠れする。 あたしはため息を吐きだして手鏡を胸ポケットにしまった。 「次は転校生を紹介する」 先生の言葉にあたしはようやく、まともに話を聞く気になって顔を上げた。
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