31人が本棚に入れています
本棚に追加
花が咲くときに音がするとすれば、きっと彼女の声のような音だろう。
容姿と平凡な名前がマッチしないくらいだ。
彼女の名前は西園寺麗華とか、伊集院美花とか、そう言った名前の方がしっくりくる。
「大西さんは開いている席に座って」
先生の視線があたしの後ろの席へと向かい、ドキッとした。
どうしてひとつ席が空いているのだろうと思っていたけれど、大西さんの席だったようだ。
「はい」
大西さんは頷き、スッを伸びた背筋であたしの後ろの席へと向かう。
彼女が横を通る瞬間緊張から思わず生唾を飲み込んでしまった。
「よろしくね」
あたしの席を通り過ぎる寸前で、大西さんは声をかけてきた。
なんの変哲もない普通の挨拶だったのに、あたしの心臓はまた大きく跳ねた。
「う、うん!」
たったそれだけの返事をするのにも、声が裏返ってしまったのだった。
☆☆☆
「信じられないほどの美人……」
休憩時間になり、女子トイレへと駆け込んだあたしはヒナへ向けてそう言った。
「確かに……」
あたしとヒナは同じように腕組みをして鏡の前に立っていた。
最初のコメントを投稿しよう!