fastoso

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 名古屋は、嫌いだ。  行きがけにキャリーバッグを預けて行ったレセプションに立ち寄り、藤本です、と名前を告げる。いつものように丁寧なホテルマンは、「お待ちしておりました」と俺を歓迎して、荷物は部屋に運んであると告げる。  カードキーを受け取り、エレベーターホールに向かう。  両側に何基も並んだエレベーター。一番奥がやって来たから乗り込んで、39のボタンを押す。 「いつも通りマリオットを取っておいたから、使いなさい」  あの人はそう言って微笑んだ。  マリオットアソシアは、好きだ。いいホテルだから。とても静かで落ち着いていて、高級ホテルの条件は充分に満たしているけれど、圧迫感はない。とてもゆったりしていて居心地がいい。  エレベーターはあっという間に39階に到着して、俺を下ろす。部屋番号の案内を見て、そちらの自動ドアにカードキーを翳すと、音もなく開く。  あてがわれた部屋は、廊下の先のデラックスダブル。これもいつも通り。
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