悪役令嬢戸惑う

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「あ、そっちの靴も舐めて良いです?」 もう片方のブーツを指差しながら実に嬉しそうに恍惚な表情を見せる彼女に、わたくしは耐えきれず。 「も、もう結構ですわ!」 身を引いたが平民は気持ち悪い動きでわたくしの後ろをとると、靴を丹念に舐め始めた。 その瞬間、恐怖が先に立ち、恥も外聞も捨てて喚く。 「ル、ルーシェ何をしているの! は、早く助けなさい!」 「......は! も、申し訳ありません、セレスティナ様! 貴様、セレスティナ様から離れ......」 慌てた表情で平民に掴み掛かかり、引き離そうとしたルーシェだったが。 「うるさいなあ! 今セレスティナ様のお靴を舐め回してるでしょ! あっちいって!」 「かはっ!」 目に求まらぬ早さで平民が掌打を放つと、ルーシェは弾き飛ばされ壁に激突した。 「ルーシェ!」 呼び掛けるも返事はなく気絶してしまったらしい。 その威力たるや、ルーシェが叩きつけられた壁にヒビが入るほどで。 それを放った本人はいつもの事だと言わんばかりにけろっとしている。 わたくしは平民を見るやいなや、ルーシェを放って逃げ出した。 「あ! お待ちくださいよぉ、セレスティナ様ー! まだおみ足をペロペロしてませんから! うへへー!」 だが追いかけてくる平民ミルスにわたくしは。 「いやあぁぁぁぁぁ! 来ないでぇぇぇっ!」 初めて恐怖から泣き叫びながら、学校を走り回ったのだった。
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