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「式典が終わりました。
ご家族の方、前へどうぞ」
再び音楽隊の演奏が始まった。
これはアニメのオープニングテーマ。
なんでポップな曲なんだろう。
これから半年間会えなくなるのに、この場にふさわしくない曲だと思ってしまった。
しかも前へって誘ったわりには、同時に隊員たちは一糸乱れぬ足取りで乗船していってしまった。
おじさんに話しかけることもできなった。
最後くらい声かけさせてくれないのって俺は少しひねくれた。
隊員たちは乗船すると、全長200メートル近い甲板の上で一列に整列した。
白服をビシッと着こなした男たちがずらりと並ぶと、これまた圧巻だった。
その男達は変に笑ったり、悲しんだり、手を振ったりしない。
見送りの者たちへ向ける視線は穏やかだったが、その表情はけっして緩むことはなかった。
(この護衛艦よりでかいタンカーを海賊は襲うんだぜ?
おっそろしいよな。
自衛官なんてなるもんじゃないな)
自衛官ってそんないい職業じゃないなって俺は思っていた。
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