東京ゆびさきQuartette

はじまり

　電車に揺られながら、ヘッドホンから流れてくるニュースを聴いていた。

爽やかな男性ナレーションの声で、
『今日の朝は晴れ。
晴海埠頭には雲ひとつ見えません。
ですが、夕立がやってくる可能性もありますので、鞄の中に折り畳み傘を忍ばせておくと良いでしょう。』

と言っている。

そうなんだ。
まぁ、降りそうにないけど、折り畳み傘はいつでも持っているから、そこは大丈夫だ。

『ここで、今年は東京奠都(とうきょうてんと)より150年の年でもあります。

江戸から東京に改称されたのは、1868年のことでした。

江戸から東京への改称の際に、慶応から元号が明治になり、明治2年には政府が京都から東京に移されましたーーー。

ーーー

ーーー』

それを聴いていて、
私は『・・京都行ってみたいな・・。』
って、心で呟いていた。
だって、やっぱりちょっと気になるじゃない？

京都、おいでやす～。
って言うでしょ？
あれ？
おこしやす～。
だったっけ？

『・・次のニュースです。
昨夜、歌舞伎町の深夜営業店で、ふたりの遺体が見つかりました。
事件現場には血の付いた金槌が見つかっており、争った形跡はないものの、ひとりを殺害した後、もうひとりが自らを撲殺したものと思われますーーーー。』

・・そんな物騒な事が起きてたんだ・・。
想像するとなんだか怖い・・。

でも、そんな気持ちは、人混みに揉まれているうちに、どこかに薄れてしまった。