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嵐の海へ
エリックが甲板に出ると、立っているのもやっとなくらいの風と、目を開けるのもやっとなくらいの雨が身体中に吹き付けて来る。
エリックでこれなら、チヨメは飛ばされているのではないか。そんな心配がエリックを焦らせた。
「チヨメちゃん!大丈夫!?」
エリックが必死に目を開けると、甲板の隅に小さな人影が見える。
「エリックくん!なんで来ちゃうんですかあ、もー!」
立ち上がったのは、やはりチヨメだった。左手に剣を持っているので、どうやら剣は回収したらしい。
「危ないから早くこっち来な!飛ばされちゃうよ!」
エリックは手すりを掴んでいるし、なによりガタイがいいから飛ばされることはないだろう。
だがチヨメは小柄だし、剣に気を取られていてどこも掴んでいない。
「大丈夫ですよー!エリックくん先入っててくだ……!!」
だがその時呑気に手を振っていたチヨメに、どこからか飛んできた木片が当たる。
「チヨメちゃん!」
チヨメの身体がぐらりと甲板から海の方に傾く。エリックは咄嗟に走ってその手を掴んだ。
「うわっ……!」
だが遅かった。
力の抜けたチヨメの体はエリックの想像よりも重く、二人は嵐の中の海に放り出されたのだった。
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