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行方不明
「ねえ!やばいよ!どうしよう!」
しばらくして、ずぶ濡れのルイスが慌てた様子で帰ってきた。
「あっ!おい、ルイス!そんなびちょびちょのままキッチン入って来んなよ!ていうか、なんでそんな濡れてんの?」
シュウジが眉間にシワを寄せるのも気にしないで、ルイスがテーブルの方に走ってくる。
「え、何?本当にソウイウコトだったの?え、もしかして外で雨の中……とか!?」
ロロネが興奮気味に身を乗り出すと、ルイスが首を横に振った。
「チヨメとエリック、船のどこにもいなかった」
ルイスのその言葉にキッチンが静まり返る。
「え?どういうこと?まさか……」
シュウジのその言葉に、全員が窓の外を見る。
「待って、この嵐の中落ちたんなら……」
そこまで言って、リュドミラが口を閉ざす。
「……もしそうなら相当やばいね。チヨメは海怖いし、そもそも泳げないし。いくらエリックでも、チヨメのこと抱えて泳ぐなんて無理がある」
フローレンスが冷静にそう言うと、ルイスがガン!と床を踏みしめた。
「マム、冗談でもそんなこと言わないで。あとチヨメとエリックが見つかった時の為に準備してて。ロロネ、嵐がおさまってきてるからとりあえず進路変更して、来た道戻ってて。シュウジとリュドミラとシェリーは望遠鏡でもなんでもいいから、とにかくチヨメとエリックのこと探して。俺は近くに島がないか、地図探してくるから」
ルイスが早口にそう言うと、各々が動き出した。
全員が出払ったキッチンでルイスがうなだれていると、足元をヤマトが這ってきた。そしてルイスの肩に登ると、寄り添うように首に体を巻き付ける。
「……大丈夫だよね、ヤマト」
ヤマトの尻尾を触りながら、ルイスは深くため息をついた。
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