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そんな――
張り詰めた空気に漂う甘い性の匂いが、男の欲望を刺激しないワケはない。
紗和の、寝乱れた感じすら一切みせない、滑らかな絹浴衣の襟もとから覗く首筋の白さ。
淡い色に膨らんだくちびるが、思い浮かんで。
あの壊れそうに細い指先が、一体、どの部分を弄っているのか。
菁の妄想は、きりなく広がった。
布地を突き上げて薄く透ける紗和の 首の立ち上がりを思い出せば。
そこを自分の手指でいやらしく嬲っているのだろうかと、菁の想像は止まらなくなる。
仕事を終えて自室に引き取れば、堪えきれず、すぐさまにスラックスから自分自身の猛りを抜き出し、扱き上げるのが、もはや菁の習い性のようになった。
あの人形めいて透明な表情のまま。
くちびると同じ色の乳 を 核を、淫らにこね回しているのだろうか。
しかし、色のついた声を決して漏らさぬよう、息だけは懸命に押し殺しているのだ――
そう思えば、菁の欲望は、たまらなく加速した。
「ならば存分に啼かせてやろう」と。
菁は妄想の中で、その身体に触れる。
指が蜜まみれになるまで、紗和の入口を、陰 を弄り、胸の尖りをくちびると舌で舐って嬲った。
そして大抵は、その妄想が自らの挿入にいたるよりもずっと早くに、菁は達して果てた。
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その日も、また襖の向こうの空気が変わった。
紗和の自 が始まったのだ。
しかし、紗和は、今日はなかなか「イケない」ようだった。
震える空気がドンドンと張り詰めて、甘い熱を孕んでいくのに、ふと力尽きたようにして、それが緩んでしまう。
苦しげな呻き声が、襖を通して控えの間の空気を震わせた。
もしかして、具合でも悪くしているのでは、と。
菁も不安を覚え始める。
「……お嬢さん? どうかなさいましたか」
襖を隔て声を掛けるが返事はなかった。
躊躇はしたが、菁は襖を開け、中の様子をうかがうことにする。
紗和はベッドの上に横たわっていた。
布団は跳ねのけられ、帯の下の打ち合わせはしどけなくはだけて、白い腿の付け根までが露わになっている。
枕にきつく顔を埋めて、紗和は肩で激しく息をしていた。
「大丈夫ですか」
いま一度、そう声をかければ、紗和がゆっくりと菁を振り返った。
大きな瞳は、零れ落ちんばかりの涙に潤んでいる。
噛み締めたくちびるは深紅に染まり、耳朶も濃いピンクに色づいていた。
紗和は、瞳を揺らしながらも菁を見つめ続けている。
どうしたものかと、菁は困り果てる。
今さら、無言で立ち去ることも難しかった。
――まさか、オ ニーを「気づかれていない」などと、思っていないだろうな?
そんな、ふと意地の悪いような気持ちも芽生えていた。
紗和は何も言わずに、ただ菁を見つめていた。
そして、自分の手を胸の合わせに挿し入れ、もう片方の手を脚の付け根へと押し当てる。
くちり…と。
肉襞を割り開くやわらかな音がした。
そして、粘液を掻き回す水音が始まる。
紗和は胸の尖りと陰 とを、同時に小刻みに擦り上げた。
長い睫毛を瞬かせながらも、紗和は、菁から目を離さない。
けれども、快感が高まってくるとともに、疲れも増すのだろう。
懸命に下を嬲れば、上がおざなりになる。
何度も、 首から、ふわりと指が離れた。
その度に、立ちあがっていた淡い桃色の尖りが、見る見る力を失くしていく。
菁は、ただその場に佇んでいた。
ほんのわずかも、表情を変えぬままに。
紗和の腰が蠢き始める。
あらわになった真っ白な内腿に、ひくり、ひくりと力が入るのが見て取れた。
「っ……あっ、あ」
唾液で濡れたくちびるから声が洩れた。
瞼がきつく閉じられる。
達し終え、紗和の身体からクタリと力が抜けた。
その身体をそっと上掛けで覆い、菁は部屋を出た。
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