小鳥遊菁の事情

6/6

49人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
**** その後も、紗和の「日課」が止まることはなかった。 ほぼ毎日、菁は紗和の自 を襖越しに感じ取る。 ――ひたすら、心を「無」に。 自分は「犬」だと、外敵の侵入にだけ、気を配ればいいのだと。 それだけを見つめ続けるように、目を見開いて。 畳の上、菁はスーツの膝を胡坐座に折り曲げて座り続けていた。 「たかなしさん……」 聞き逃しそうに細い声がした。 「…たかなし、さん」 二度目に呼ばれ、菁は慌てて立ち上がる。 襖の前で「どうしました」と声を掛けたが、返事はなかった。 薄く襖を開け、菁は中を窺う。 紗和はベッドの上に起き上がっていた。 ちょうど、初めて会った時と同じように―― 「お嬢さん…?」 菁が怪訝に問いかければ、紗和は視線で菁に縋る。 ――傍に来てほしいと。 菁が、ベッドに歩み寄った。 紗和が指を伸ばして、菁の手を取って引き寄せた。 強く深く引き寄せられるがままに、菁は紗和の枕元に両膝をつく。 紗和は菁の手を、自らの脚の間へと押し当てた。 身に着けている下着は、ショーツではなく腰巻なのか。 すぐに、ごく薄い下生えが、やわらかく菁の手の甲をくすぐる。 合わせ目からは、すでに粘度のあるぬるい液体が溢れ出していた。 紗和は菁の指を、そのぬかるみに沈めていく。 そして、ク  リスを 口を、菁に擦り付け始めた。 粘度の高い水音とともに、紗和の息遣いが弾み始める。 菁は、紗和の耳朶が淡く染まっていく様を、身じろぎもせぬまま見やる。 充血して立ちあがった紗和の陰 がコリコリと自らの肌に当たる感覚を、菁はただ味わい続ける。 そして、菁の 茎もスラックスの内で静かに張り詰めていた。 紗和が、ふと菁に人差し指を立てさせた。 そして、それを性具めいて自らの内に挿入し始める。 潤み切った暖かい肉に包まれていく……その感触に。 菁はゾワリと背すじを粟立てた。 鈴口から、ぬるい液が染み出すのを感じた。 紗和が、菁の手首を取って上下に動かす。 熱っぽくやわらかいが、狭くきつい 内だった。 菁は、まるで自分の人差し指の方が、襞に激しく扱かれているように感じる。 紗和は鼻にかかった溜息を洩らし続けていた。 やがて、くちびるが緩み、噛み殺しきれなくなった声が、「あ、っあ…」と、破片のように零れ落ちる。 菁の手はジュクジュクに濡れそぼって、人差し指が挿抽される度に大きな水音を立てる。 動きに伴い、自然に 核に触れるような位置へと、菁はごくわずかに親指をそらせた。 それを感じ取った紗和が、悦んで腰を擦りつけ始める。 菁が、かすかに上体を傾け、くちびるを紗和のうなじへと近づけた。 紗和の耳朶に息がかかるほどには近く。 だが、紗和の肌に触れることは決してない距離を保って。 紗和は腰を揺らし、懸命に菁の指をさらに奥へ奥へと押し入れ。 頂点へと駆け上がろうと、激しくかぶりを振りながら息を詰まらせた。 菁を含み込んだ内側が激しく痙攣を始める。 そして、声にならない悲鳴―― 紗和の中でエクスタシーの大波が凪いでいくのを、菁の指は感じ取り続けていた。 どれくらい経った後だろうか。 紗和が、ゆっくりと菁の指を自らから引き抜いた。 ぐちゅり、と音がする。 菁の手は、紗和の淫液にまみれきっていた。 汚れていない方の手で、ハンカチを取り出し、菁は紗和の陰部と手指を拭ってやる。 そして、自分の手のぬるみを拭き取った。 気づけば、紗和がまた、菁を見つめていた。 紗和が菁のスラックスへと手を伸ばす。 折れそうに華奢な指が、菁のベルトを緩めホックを外し、ジッパーを引き下げた。 すこし下着をずらされただけで、滾り切った菁の陰 があらわになる。 張り詰めた亀 を、紗和の指がそっとかすめた。 突き上げる快楽に、菁は思わず鋭い悲鳴を噛み殺した。 紗和は、その指で掌で、菁の先端の丸みを、やわらかく撫で続けていたが、やがて、そこにくちびるを近づける。 くびれまでを、そっと含んでから、ひたすらに口内の丸みを舌で弄んだ。 紗和の与える愛撫は、ひどく曖昧で柔らかすぎた。 竿を擦るか、舐めるか。 もう少しだけ刺激が欲しくて堪らなかったが、知らぬうちに高まり切っていたものがあったのか、菁は、ごく出し抜けに射 してしまう。 紗和の口腔に汚濁を放ってしまったことを後悔する余裕もないままに。 菁は、ビクビクと腰を痙攣させながら、濃い白液を吐き出し続けた。 吐 が終わり、すこし張りを緩めた 頭を含んだまま、紗和が菁の ーメンを飲み下した。 **** それからほどなく、菁は任を解かれた。 須藤は娘のために「番犬」を飼う必要が無くなったのだ。 須藤紗和は、十九歳で死んだ。 (終) Thanx, for my nostalgia. "Wild World" Mr. big
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

49人が本棚に入れています
本棚に追加