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「最近仕事にあぶらがのってきたね。もう少しやせればキミはもっとてかり輝くよ」
さわやかイケメンの声が部屋に響いた。でも、なんだか嬉しくない。
首をかしげつつもう一度乗ってみる。
「あぶらカタブラ! あぶら退散!」
よけいに、わけがわからない言葉になった。ただあぶらを言いたいだけのようだ。
「イケメンが……なにを言っても許されるとおもうな!」
体重計を持ち上げ、両手で相手の顔を抑えこむような感覚で抱えこみ、睨んでしまった。
目の前にあるのは人ではなく体重計だ。返事はない。無言で体重計を見つめる。
気づけば、あぶら汗が流れてきていた。ノーマルの言うとおりにあぶらぎっている自分に落胆しながら、モード変更に手を伸ばす。
モードはイケメンのノーマル、エス、エムと少女の四種類。
「ノーマル以外ならなんでもいいや」
エスに設定し、深呼吸をしてから足を置く。
「このメスブタめ」
どうやら、サディストのエスだったらしい。
強気な言葉で叱咤してくれるというわけか。意味不明なあぶらまみれのノーマルよりはいいかもしれない。
少しわくわくして、再び乗ってみる。
「俺様に豚足乗せるな」
「今度はブタしばりかっ」
私はまた体重計を顔面に掲げて叫んでしまった。 もう期待せずにモードを少女に変更する。
どうせ、エムはマゾヒストだろう。想像がつくエムより少女のほうがまだ気になる。
「歌って踊ってカロリー消費しよう」
乗ったら、アニメヒロイン的な声が出てきた。とおもったら、ポップな音楽が鳴りだし歌いだした。
私には苦手なものがある。アイドル系の曲だ。
そっと電源を切って、ソファにこしかけた。
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