19.Trèsor――Ⅲ(6)

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 互いのグローブを軽く打ち合わせて始まったスパーリングは、思いのほか長く続いていた。  二分を待たずどころか一瞬で殴り倒された前回と違って、まだ足は動くし打たれてもいない。  ……というのもとにかく踏み込みに行く隙が与えられず、ケンジも本気で殴り倒しに来ないから、に過ぎないのだが。  そういう大人対応もわかってしまうだけに、なおさら翔の苛立ちは加速した。  「どうした? なる早で俺を倒すんじゃなかったのか?」 「る……っせ!」  飛んできた嫌味に、思わず繰り出したストレート。  タイミングがずれ、目指したポイントにすでにケンジはいなかった。
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