19.Trèsor――Ⅲ(6)

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 顔も上げずに手のひらと声だけではあったが、予想どおりの返事をとりつけて、ホラな?と翔がケンジを振り仰ぐ。 「今日ジム休みだってヤスさんから聞いた。だから(こっち)が混み始める前に。早く」  いきなり話を持ちかけて、しかも今すぐ連れてけとは自分もずいぶん偉そうで図々しくもあるが。  どう思われるかなんてこの際どうでもいい。 「んで俺と勝負……――や。リベンジさせろ」  初めてジムに連れていかれてコテンパンにされた日、そういえばここで誓ったのだった。いつかアイツを倒してやる、と。  その分も込みで、今あらためてこの男に挑みたい。   当然勝てる見込みなどゼロに等しいが、それでも勝負するなら――動くならしかない。
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