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「え?」
黒のバンテージを巻く手を一瞬止め、ケンジが顔を上げる。
「刃物もったいずみさんの前にとび出した時、どんな心境だったか、って訊いた」
「……」
バンテージもパンチンググローブも準備万端ですでにヘッドギアまで装着し、控えめにシャドーを織り混ぜながらのフット反復練習に入っていたこちらに黙って視線を送ってきている……気配はする。
それでも、なぜその話を知っているのか、という質問は飛んでこなかった。
よそよそしそうに見えたが実はもういずみが話していたとか、あるいは、今日いきなりのこの流れや空気で彼なりに何かしら感じ取っていたのかもしれない。
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