19.Trèsor――Ⅲ(6)

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「後悔してる? 庇ったこと」 「いや……」  一言だけ答えてケンジは微かに笑った。  支度の出来た拳に目線を落としたまま。 「……」  それが後悔してないという表情(カオ)だろうか?  翔のそんな心情が透けて見えたのか、笑みをさらに深くしてケンジがシャツの長袖を捲り始める。 「ホントだって。止めたこと自体は後悔してねえ。けどな……」  あらわになった上腕外側の傷を向けて見せ、薄くため息をついた。
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