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「……やってらんねえ……」
完全に据わった目でボソリとつぶやく翔に、ケンジは気付いていない。
彼がグローブのみを装着し終えたのを確認して、憮然としたまま足早に青いリングに上がる。
どうあってもギアは必要ないらしい。(こんな素人相手では当然と言えば当然だが)
「んじゃ軽くマスでも……」
「や。スパーで」
ケンジの提案を遮って、最後のアップとばかりにステップを踏みながらグローブを打ち鳴らす。
この心境で、『当たっても打ち抜かない位置取り確認と練習』などしていられるか。
冗談ではない。
打ってこいや。そして打たせろ。思いきり。
そんな思いを込めたひと睨みを真正面からケンジに向ける。
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