3個目(22.1.5加筆・修正済)

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※微。複数描写に注意※ ======================== ここ数週間、桜井以外との男はご無沙汰だったが、慣れた行為には喜びの感情しかない。 服を脱ぐことに躊躇も、後ろの孔を広げて媚びてみることになんの羞恥心や抵抗感もない。 いつも着用するΩ用の首輪は、それがないと興奮しないというリクエストがあってからつけ始めただけで、間違っても自分の意志などではない。 どうしようもなく、男のβでもイケる性欲が強いαが好きらしい。 が…、 「あっ…・、痛、っ、…!」 「ん?乳首、いやなのかい?」 「も、っと…優しく…、っ・」 今日の男とは仕事上何度か面識はあったものの、体を重ねるのは今晩がはじめてであった。 「ははは、痛いのも気持ちいいんだろ?」 「…違っ、いやです…、痛いのは…」 あまりの痛みでうっすらと涙を浮かべているのを快楽だと、相手は勝手に解釈している。 「ココは赤くなって美味しそうだけどねぇ?」 「ひっ…ぁ"、っっ…!」 (この、へたくそがっ…!摘まむとつねるは違うんだよっ!) これが桜井だったら簡単に蹴り上げるのだが、太い取引相手だ。機嫌を損ねたくない。 「ほら、すっかり涙目だ。いやらしい子だねぇ」 「あっ…、やめっ・ひ、…」 ぎゅっと容赦ない力でつままれ、苦痛から出る涙をいいように解釈する男に心底嫌気がさす。 …ダメだ。多少の痛みは我慢するしかないと分かっているのに、これ以上は萎えてしまう…。 クソッ!と苛立ちながら、乳首に触れている指にそっと手を重ね制止させた。 「…、…中がいい…」 もう前戯などやめて、奥を激しく突いてほしい。 そっちのほうがまだ快楽を追える。 「そうか。けど、僕は…勃たないんだ」 ………は? その言葉に目を丸くする。 ちらっと荒々しい息を吐く男の下腹部を見るも、確かにピクリともしちゃいない。 役に立たないのに、なぜ呼び出した? その(いぶか)しげな様子に男も気付いたらしい。 「君はαの男が好きだって聞いたから、楽しめると思うよ」 「なに、を…」 下卑た笑みを浮かべている男。 そしてそれが合図だったかのように突如扉が開き、2人の見知らぬ男達が部屋に入ってきた。 「僕は見てる方が楽しいからね。そちらの部長さんの許可をもらって、ショータイムにしてもらったよ。あ、君の趣向に合わせて、二人ともαだよ」 「それは、いらないお気遣いをどーも…」 余裕ぶって見せたが、これほど屈辱なことはない。 それも、どこの誰とも知らない二人を相手するなど冗談ではない。 「申し訳ございませんが…、俺には複数の趣味はありません。失礼してよろしいですか?」 抱かれるのは会社のためではない。 あくまでも、αよりも"優位"でいたいだけという悪癖から。 はっきりと拒否を示すと目の前の男は、やれやれと溜息をついた。 「ここまでしといて、随分なことを言うねぇ?まぁ拒否したいなら別にいいけどさ…。この続きは、君の部署にいるΩ君に相手をしてもらおうかな?」 「っ!?」 その発言に譲の思考が止まる。 ずっと譲だけが知っていて、隠してきた秘密。 「隠さなくていいよ。君が仕事を辞めないのも、枕営業を決めたのも…その子のためだったんだって?たかがβの分際で、Ωの代わりだなんて頑張るじゃないか」 『Ωのために体を張る、上玉のβがいる』 単純に興味を持ったと語られ、笑われた途端、ゾクッと激しい恐怖から鳥肌が立った。 「……っ、ぁ…!?」 「こんなおじさんでも、αの威圧は役に立つよねぇ?」 ベッドの上で震え、黙っている譲の顎をくいっと持ち上げると、男は屈服させたと捕食者の目で見降ろしてくる。 「依岡君?はじめて会った時から、実は自尊心の塊で気が強いのも知っていたよ。僕は…そんな子がぐちゃぐちゃになる姿がたまらなく好きなんだ。でも、無理矢理は良くないよねぇ?―――今後のためにも」 本当、クソみたいないい趣味だ。 けれど、因果応報というのであれば…これは過去、自分がセフレにやろうとしていたことと似ている。 職場のΩを守ってやりたいなんて、とんだ美談めいた綺麗事だな… 幸い、俺はβだ。孕むこともなければ、番いになることもない なら、もうやれることは一つだけ―――…。 「……別に、今さら…ひとりもふたりも変わらねぇけど…素チンだったら、食い千切るからな」 できるのは虚勢を張ることだけだった。
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