3個目(22.1.5加筆・修正済)

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* * * * 「依岡君。いままでのショーの中で一番最高だったよ?また頼むね」 「…、っ……」 声を出す事ができない譲を置いて、男達はホテルの部屋から出て行った。 (痛い、な……) 暴れようがお構いなしの行為で主導権など握れるはずもなく一方的に嬲られた。 喉も尻穴も押さえ付けられた腕も足も、全身が悲鳴をあげている。 『や、ぁ…あ"、壊れるっ…ああぁ!!』 脳内に残っているのは嬌声ではなく悲鳴。 どれほど強がったところで性という繁殖行為に特化していない、普通のβで男だ。何度も乱暴に突き上げられれば快楽というより、拷問に近い苦痛を味わう事になる。 取引相手は譲の鳴き叫ぶ様をそれはそれは楽しそうに眺め、雇った男達へ容赦ない攻めを命令した。 「…痛っ…、ひ、…」 おそるおそる感覚が鈍くなった後ろの孔に触れてみると、腫れ上がっているもののちゃんと塞がっている。 その事実だけに心の底から安堵した。 2人のαが相手なんてキツすぎだ。中に出されたものを掻き出す体力もなければ、風呂に入る気力も起きない。 チラッと横を見ると「水分は大事だから摂るといい。」と置かれて行った水のペットボトル。 それを掴むと渾身の力で壁に投げつけた。 「くっ、そがっ…、」 疲れた… けど、このまま寝れば間違いなく体を壊す。 「……っ、…ぅ…!」 床を這いずり、なんとか手を伸ばしたのは自分の鞄。 震える手で取り出したのはスマホではなく、水筒と桜井が情事のときに渡すチョコレートの箱。 一気に食べすぎると勿体無い気がして1日の最後に一粒ずつ食べていた、6個入りの最後の一つ。 まるで宝石のようにキラキラして見えたのは、かなり体力を消耗したせいだ。 茶を飲めば喉は癒されたし、少しだけ気が楽になった。 今日のチョコレートはキャラメルヌガーが入ったビターチョコ。 カリッと噛めば、口に広がった甘さに鳥肌が立つ。 一番甘そうだから最も疲れた日に食べようと決めたのは正解だった。 「なんだ….、意外と平気だ」 呟きに返答などない。 惨めすぎて泣くかと思ったが、あまりの滑稽さに涙も枯れ果てたらしい。 付き合ってる人間も心配してくれる人間もいないのだから、誰かに縋りたい気持ちにもならない。 俺が、Ωを庇っている? 違う。それは勝手な解釈だ。 αよりも主導権を握りたい。 ときには有益な情報を手に入れ、それを武器に商談を有利に進めたこともある。中には本気で惚れ込まれたこともあったが、いいように手玉に取った後は捨てた。 ただの事務員。たまにしか営業に行かないような地味な社員だが、会社にとって一番有能だと知らしめたかった。 Ωにしゃしゃり出てこられると困るから、枕営業を自分から望んだ。 (そもそも、Ωを使った枕営業なんぞ時代遅れだ) Ωはαのために存在しているし、Ωを守れるのはαだけ。 その二人が結ばれ、俺の前で幸せな光景を拝めたら、きっと過去の自分を許せる。 全ては俺のため。 クソ野郎には、俺のようなクズが相手するのが一番いい。 『譲さん、好きです』 は?こんな、汚れた俺を? 冗談じゃない、おかしな話だ ははっと笑っても、その声は虚しく消え失せる. Ωであるアイツも、 αである桜井も、駒にしかすぎない。
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