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オマケ
「ゆ、譲さん!出来ました!!」
指摘されたところも直したし、見返しもバッチリした。
予定よりも早い仕上がりに感動が隠せない。
質問されるであろう事項は、月曜日に上司と念入りに打ち合わせをしておけば問題ないだろう。
「って、あれ?譲さん…?」
返事がないので顔を覗き込むと、譲は胸の中で静かに寝息を立てていた。
時計を見ると深夜2時半。こんな生活だからとダラダラせずに規則正しい生活をちゃんと守っている彼だ。
眠くなるのは、致し方ない。
「ありがとうございました」
耳元で囁くも反応はない。
(なんやかんやで、結局譲さんの力を借りてしまったな…)
眼鏡を外し、ふーっと長い息を吐く。
譲には、あまり情けないところを見せまいと必死なのだが、まだまだ経験と知識不足ゆえに上手くいかない。
「まだまだ追いつけない、か」
腕の中にいる愛おしい彼はスペックが高すぎる元社畜。枕営業などしなくとも会社を間違えなければ確実に出世していた。
きっと部下達からも慕われる、いい上司になっていたのだろう。
(けど、いまは俺のだ)
「貴方には常にかっこいいとこを見せたいんですが…」
敵わないと呟くとその表情が満足げに綻んだように見えた。
スンスンと髪を嗅ぐと自分と同じシャンプーの匂い。首元は柔軟剤の香りと微かに譲の匂いがする。
まだ噛み跡が残っている頸を見ると、小さく微笑む。
「またつけましょうね」
なんとなく譲から申し出てくれる気もするが、彼はストレートに付けてくれとは言わないだろう。
(あなたが結婚してなくて、本当に良かった)
再会時に、恋人がいても結婚していても関係ない。
まず「責任」が強く「立場」に弱い譲には、逃げられない重役職を与え、強制的に手元に置く。
その後、彼のあられもない姿を浮気の証拠だと相手に見せつけ別れさせる。
この人が慰謝料程度で手に入るならむしろ安い。
どれほど最低最悪の男になろうも、その傷は俺が癒せばいい。深く心に入り込み、歪んだ形から最終的に愛を手に入れる。
これを一体、何度シミレーションしただろう。
誰にも語れないほどの醜い執着と独占欲。
現実にならなかったのは、お互いにとって本当幸いだった。
「…ん、…?」
寝室に運びベッドに降ろすと譲が目を開けた。
小さく頭を上げ、じっと正義を見つめている。
「あ、すみません…今から」
「……、のか?」
その発言にピシッと時間が止まった。
ーーしないのか?
確かにそう聞こえた。
「終わんの、ずっと待ってた」
普段ならば絶対しないであろうムスッとした顔と、二度目の誘い文句は疲れていてもダイレクトに股間に響く。
「………」
「??」
黙る正義と、ようやく性行為に誘えたのに思ったのと違う反応が返ってきて焦る譲。
「えーと、正義くん?」
「……〜…、」
「うん??」
何かボソボソ言っているようだが小さすぎて聞き取れない、と近寄った途端、勢いよく押し倒された。
「ちょ、なんだよ…?急に驚くだ…」
ろ?を言う前に、譲は絶句した。
「……譲さん、本当に最高だ」
もう覚悟しろと言わんばかりの、ギラギラとした目とはぁはぁと荒い息遣い。
「…おま、まさか…」
恐る恐る正義の股間に目をやると既にズボンを下ろして絶好調の状態である。
その隣にはローション。
「最初からヤル気満々だったのに決まってるでしょう?貴方が誘ってるのに気付かないほど鈍感じゃありません。せっかくなので、言われるのを待ってました」
狸寝入りなんて知ってた。何十回、その無防備かつ無垢で可愛い寝顔を隠し撮りしてきたと思ってるんですか?は、コレクションが燃やされるので黙っておく。
「孕むまでヤりましょう。今日は譲さんがどんなに泣いても縋っても、何言ってもやめない。全部奥に出します」
「ひっ、あ…、ちょ、正義…!?」
譲の「待った」は正義の「いただきます」の声に掻き消され、不満そうな声もすぐ喘ぎ声に変わる。
「煽ったのは、譲さんだ」
(だからって、お前はムードを大事にしろ!!)
それ以来、譲は誘うのをやめた。
オマケ終わり
正義は譲以外と付き合ったことがないので
自制できないし、手加減も知らない
譲さんくらいだよ、こんなゴリラ相手できんの。
ガチ泣きした譲にビンタされて、翌日は口聞いてもらえなかったそうです。
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