174人が本棚に入れています
本棚に追加
* * *
今日も今日とて、夜にやってることは繰り返し。
けれど太い契約はとれたし、譲のおかげといっても差し支えない。
ただクソ会社からの評価に期待なんてしちゃいないから、これは元々の担当者が引き続き請け負うこととなる。
(……だるい)
関わっていないのに依岡譲を出せと、他社から問い合わせや接待を求める声。
この事態に会社のお偉いさんたちが気付いていないはずがない。
その証拠に退職されると不味いと思ったのだろう。
『君は頑張ってるから、ちょっとだけ特別支給ね…』と謎の手当てが支払われていた。
―――黙認・大人の常識。
なんて使い勝手のいい言葉か。
(今日のαは、やっぱイマイチだったな…)
男がいなくなったホテルのベッド上でひとり笑う。
けど羽振りはいい。男は帰ったが、ホテル代と謝礼金を置いて帰って行った。
ホテルのベッドの上で自販機で買った缶ビールを飲みながら、やっと一息つけた。
(そういや、こないだのα…。ちゃんと顔見なかったな…)
ヤケになって相手してもらったのに、顔も名前も記憶にない男の存在を思い出した。
利害の一致もなく、βと寝てくれるαなんて…。
αとは頭が優秀な故にちょっと性癖が特殊なのか?
いや、そもそもアイツがαだったのかも怪しい。
けれど鼻腔をくすぐった懐かしくも、甘い匂いがした。
「はー…、チョコ食べてぇ」
ふと、TVで特集されていた有名ブランドのチョコレートが目に入った。
疲れているせいか、無性に脳が甘いものを欲している。
思い返すと今日食べたのは、昼のカップラーメンくらいだったな…。
プツンとTVを消し、一人で寝るのには広すぎるダブルベッドの上に寝転ぶ。
明日は早起きして、近くのカフェで美味しいコーヒーとトーストでも食べよう。
あぁ、けど抱えている仕事が全部終わらなかったから、早めに出社しなければ…。
(午前までに、仕上げ…、ないと…)
自然と瞼がおりてきた。
最初のコメントを投稿しよう!