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翌日。
「今日から営業部に配属になりました桜井 正義です。どうぞ、よろしくお願いします!」
これまたイケメン様が来たもんだなぁと思わず見惚れてしまった。
男前でがっちりした背丈、だからといって野性味があるわけでも爽やかすぎることもなく、落ち着いた好青年。
周りの目も人員補充を喜ぶものではなく、"新人くんイケメンじゃん♡ラッキー"だと、既に狙いを定めている猛禽類の眼だ。
ん…?? 待てよ
桜井正義、だと???
思い出してしまったその名前にヒヤッと背筋が凍ったが、相手は気づいてないらしい。
蘇ったのは高校時代の重く苦い経験と、過ち…
ーーーいや、大丈夫だ。
向こうは営業。こっちは事務員だ。
成長した桜井の見た目はだいぶ変わっているが、それは譲にも言えること。
まさに月とスッポン。下手に関わらなければバレないだろ、きっと
が、そんな考えは甘かったと思い知らされる…。
「譲さん。この資料ちょっと分かりにくくて…」
「譲さんあぁん、パソコンが固まりましたぁあ」
「譲さん!!お昼の時間ですよ!」
(あ"あ"あぁぁぁぁあ!うっせ!!!!)
些細なことで助けを求めてやってくる桜井に困惑を通り越して怒りしか覚えない。
なぜこんなことになった!?と頭を抱えたいが、全てはあの、
『桜井の教育担当は依岡な!』
営業部は人手不足で忙しいから!と、クソ部長から洒落にならない押し付けにあってしまった。
ーーー上司命令。
断れるはずもなく「分かりました」と頭を下げつつも、理不尽さを心底呪った。
「……お前、マジでどういうつもりなんだよ」
「え、だからこの会社が、花房製薬なのか花房製薬なのか…」
「〜〜〜っ、んな細かいところはどうだっていいし、自分で調べろ!いまやネット社会なんだからすぐ出るだろ!?」
ハッとした時にはもう遅い。
譲の口から怒鳴り声が出たことなんて今までに一度もなかった。この異例の事態に周りの社員たちは「え、依岡が怒ってんぞ…」と狼狽えている。
「…・っ、桜井くん。ちょっと、一緒に屋上で休憩しようぜ…?」
「え!?まさか、社内デートですか?」
「あ"ぁ?何言ってんだ、テメェぶっこ……こっ、珈琲でも飲もう…な?」
禁止用語が出そうになったのをなんとか堪えた。
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