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ありすたるこす
誰かに尾行されてる気がして、思いっきり道を駆け抜けて狭い路地に入る。
チラッと走ってきた方を見ると、誰もいなかった……陸上部で鍛えた足がこんな時に役に立つなんて。
ホッとして通り抜けようとからだの向きを変えると、金髪の青年が立っていた。
「み〜つけたぁ!」
彼は大きく口をあけて高い声で言い、チラリと鋭い八重歯を見せた。
「ほぇ~今回はぽっちゃりさんか……よろしくなぁ」
彼は妖しい笑みを浮かべて近づいてきた。
「嫌や……来んといて」
「なにが嫌なん?ちょっと血をもらうだけやで?」
いつのまにか逆側に来ていた彼に暗闇の中に押し込められる。
彼に肩を掴まれたまま身体を下に沈められていき、顎を上げられた。
「さてと……いただきますぅ」
首筋に焼けるような痛みを感じた後、言いようのない快感がからだを支配していく。
「はぁ……んっ……はぅ」
「気持ちええやろ?」
彼は軽く言って、ペチャペチャと流れるものを舐めとっていく。
「俺、おかしくなりそう……」
「ええよ……僕のために狂って」
「アカンよ……」
僕が抵抗すると、彼は首筋をペロッと舐めて僕の耳元でこう囁いた。
「理性なんかバイバイしちゃってよ、そしたらもっと気持ちよくなるからさぁ……ね?」
彼はふふふと笑い、またジュルっと噛みついて血を舐め始めた。
「ねぇ大河、このまま天に飛び立つのとたまに気持ちよくなるのとどっちがええ?」
つうっと舌で首筋から耳の下まで舐め上げた後、彼はまた耳元で囁いた。
「……君はどうしたいの?」
俺はゴクンと息を飲む。
「ぼくぅ? 僕は大河をお持ち帰りしたいかなぁ」
ふわふわな口調で言う彼ははむっと耳朶を噛んだ。 「お持ち帰り?」
また違う感覚に震えながら聞いてみる。
「おん、もっとも〜っと可愛がりたいなぁって……嫌?」
彼は俺を見つめて、クルンとした瞳で見上げながら首をコクンと傾げた。
「嫌やないけど……」
恥ずかしくて俺はボソッとつぶやく。
「それなら良かったぁ、えへっ♪」
彼はニコッと笑い、俺の厚い胸に飛び込んできた。
俺は彼の背中に腕を回し、優しく抱きしめた。
fin.
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