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2022年2月22日2時22分の軌跡
「ああ、やっぱり来るんじゃなかった・・・・・・・」琢磨は裕之の家から飛び出して電車に飛び込んだ。美穂子に会いたいという気持ちに負けてしまったが、こうなってしまう事は初めから解っていた。裕之は琢磨の美穂子への想いを理解してうえで、いつも挑発するような言葉を投げかけてくる。それが一体どういう気持ちなのかは、琢磨には解らなかった。
「ねえ、あの都市伝説しってる?」唐突に目の前にの席に座る女子学生らしき二人組が大きな声で話を始める。スカートの中はズボンでも履いているのだろうか、大股を開いてまるで男のようであった。琢磨は少し腰をずらして体を沈めた。それを、女子高生達は気にも留めないようであった。きっと、こんな中年男の視線には慣れっこなのであろう。
「なに、都市伝説って?」答えた少女はポケットからスマホを取り出して指で画面をなぞった。
「この間、昌子j聞いたんだけど、来月の2月22日・・・・・・・・、2022年2月22日2時22分2秒から22秒の間に、ある事をすると凄い事が起きるんだって!」オカルト的な話が始まった。しかし、琢磨は自分ではさり気ない仕草のつもりで、チラチラと少女達の足を吟味している。
「ある事って・・・・・・・・、何をするの?」スマホを持ったまま少女は聞いた。その雰囲気から、きっとその会話にそれほどの興味は無い様子であった。
「それがさあ・・・・・・・・・、解んないんだよね」言いながら一人でバカ受けしている。その訳の解らぬテンションにスマホの少女はため息をつく。
「ちょっと、オッサン!キモイ目で見んなよ!!」怒りの矛先が琢磨に向けられる。
「えっ!?」気づかれていないつもりであった琢磨は、おどおどした顔で少女の顔を見る。その体は本人が思っているよりずり下がっていた。
「豚みたいな顔して、キモいんだよ!あっち行こう」二人は手を掴むと別の車両に移動して行った。
そして、残された琢磨に、他の乗客達の白い冷やかな視線に晒されたのであった。
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