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放課後
それは琢磨が高校生の頃、日頃から運動と無縁であった彼は、すでに100㎏あった。ちなみに、身長は160センチそこそこであった。
「お前、少しは自制してダイエットしろよ・・・・・・・」大きな弁当箱に入った、昼食を黙々と食べる琢磨を見ながら、裕之は呆れた顔をしながらつぶやく。
「へっ?」口にエビフライを咥えてまま、恍けた顔を見せた。
「なあ、一緒に俺の道場に練習に来ないか?」裕之は子供の頃から剣道を嗜んでおり、県大会でも上位入賞するなどの成績を残している。
「いや・・・・・・・、俺、そういうのはちょっと・・・・・・・・」琢磨にとっては、運動をするよりも、家でゲームをしたり好きなアニメを見る事の方が、大いに興味があった。
「そうだ、今日、小松も見学に来るって言ってたから一緒に来いよ」美穂子の名前が出て、一瞬心が動く。
「こ、小松さんが剣道・・・・・・・」琢磨は、白い道着の袴姿で竹刀を振る美穂子を想像して少しニヤリと微笑む。
「どうする?」彼はいつも琢磨の心の中を見透かしたような目をする。そして、決断できないときは決まって小松美穂子の名前が出てくる。それを琢磨み解っているのだが、目の前に人参をぶら下げられた馬、もしくはパブロフの犬のように反応してしまうのであった。
「え、ええと・・・・・・・・」琢磨は迷っているようであった。
「あっ、大島君!今日、宜しくね。東山くんも来るのでしょう?」美穂子は両手で何かの本を抱えながら近づいてきた。
「ああ、琢磨も一緒に行くってさ!なっ、琢磨」裕之は勝手に話をまとめてしまう。
「あ、ああ・・・・・・・・」琢磨は流されるままに返答をする。
放課後、帰宅してから駅前に集合して裕之の所属している剣道の道場に行くことになる。動きやすい恰好で来るように言われ学校の体操服でいいかと思ったが、美穂子の前で変な恰好はしたくなかった。そこで、前の年に購入した青いジャージの上下を着る事にする。
「どうしたんだい、珍しく出かけると思ったら、そんな古いジャージ出してきて・・・・・・・・、ちょっと小さいんじゃないの?」彼の母親は驚いた顔を見せた。
「べ、別に・・・・・・・・、ちょっとで裕之と約束してるから・・・・・・・、出かけてくる・・・・・・・」そう言い残して琢磨は家を飛び出した。
「裕之君ね・・・・・・・」母親はなんだか、ため息をついた。
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