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それだけで M
あの日は二次性の結果が分かる数日前の事だった。
俺たちは中学二年14歳で、家が金持ちの御厨静流と平凡な一般家庭の俺、上田未来は妙にウマが合い常に一緒にいた。親友だった。
静流がαで俺がβ。いつまでも親友として一緒にいよう、そう二人でよく話していた。
*****
「あれ?もう帰れるのか?いつもより早いな」
「うん。今日は委員会もなくて久しぶりに早く帰れるんだ。そうだ未来、こないだ貸すって言ってた本取りに来る?」
「あ、あれか!行く行く!」
なんて事ない会話、いつも通りの二人だった。
静流の部屋に入り、何かがおかしいと感じた。
忙しなく鼻をひくつかせる。
甘い匂いがした。
芳香剤?香水?
以前から静流からは微かに甘い香りがしていた。その香りを嗅ぐとほわほわと幸せな気持ちになれた。
だけど今日はいつもに増して甘い匂いにそわそわと落ち着かなくなる。
静流に促されるままベッドに腰を下ろし、見慣れたはずの部屋にどきどきと心臓が高鳴った。
「お待たせ、これ」
差し出された本を受け取る為に伸ばした手。
静流の指にちょんっと触れた。
たったそれだけの事なのに自分の顔が赤くなっていくのが分かり俯く。
静流は―――?と顔を上げると静流の顔も俺以上に赤く、呼吸も乱れどこか目が虚ろだ。
「え?」
尋常ではない汗にカタカタと震える静流の細い身体。
崩れ落ちそうになる静流を慌てて抱き留めた。
その時だった。
部屋に入った時に嗅いだ甘い匂いがぶわりぶわりと広がって、すぐに部屋中を満たした。
どくんと鳴る心臓。短く荒くなる呼吸。
何だこれ、何だこれ、何だこれ???
パニックを起こしながらも気にかかるのは静流の事。
震える身体で何とか静流をベッドに横たわらせる事に成功して、ほっと息を吐く。
「―――みら…い」
薄っすらと開いた涙で濡れた瞳が俺の事を見つめ、艶めかしい吐息とともに俺の名前を呼ぶ。
途端、目の前が真っ赤に染まった。
もうダメだった。
――――これは俺のだ!
頭の中で声がした。その声に支配され俺は獣のように静流を犯し、その項に牙を立てた。
俺たちはあまりにも幼く、あまりにも無知だった。
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