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「上田、お前って御厨と仲いいんだろう?あんなエリート中のエリートとβのお前がよく仲よくしてもらえるな?別にお前ん家超絶お金持ちってわけじゃなかったよな?」
「――別に。中学から同じでなんとなく気が合っただけ。特別な事なんて何もないさ」
そう言って笑ったが、どこかぎこちなくなってしまったのは仕方のない事だった。
「と、お前βなのに…Ωなみに綺麗だよな…」
友人のごくりと生唾を飲み込み俺の方に伸ばされる手。
自分を見つめる友人の目に熱が籠るのを見て、渋面を作り露骨に避けた。
「やめてくれ。俺はΩじゃないって何度も言ってるだろう?」
普段とは違う圧に友人は慌てて謝り、本題に入る為にコホンと一つ咳をした。
「―――で、だ。御厨と仲いいお前に頼みがあるんだ。俺の知り合いのΩの子がどうしても御厨とお近づきになりたいって言うんだけど、仲取り持ってくれないか?」
「なんで俺が……」
「俺とお前の仲じゃないかー。同じβ同士さ、その子御厨に運命感じちゃってて、俺らβにとって『運命』って憧れだろう?だからその手伝いができたらって思うわけよ」
『運命』その言葉にずきりと胸が痛んだ。
その子が御厨に運命を感じたという話はどうせ口からでまかせだ。
そんな事ありっこない。
だってあいつは―――。
「悪いけど、そういうの一切協力できない。前に一度そういう話持って行った時こっぴどく怒られたんだ。俺は御厨との関係を壊したくない。だから―――ごめん」
静流と誰かの仲を取り持ったことなんか一度もないが、こう言って置けば大抵の場合はひいてくれる。
「そっかぁ。そうだよな。悪かった。Ωの子には俺が何とかうまい事言っとくよ。じゃあな」
友人は笑顔で手を振り去って行った。
これで何度目なんだ。
中学からの友人御厨静流はもてる。
実家は金持ちだし頭脳明晰眉目秀麗ときたらまぁそうだよな。
性格もお高くとまってるなんて事はなくて誰にでも優しい。
俺のような平凡家庭のβを傍に置いてくれている時点でαとして世間のウケもよかった。
「はぁ………」
胸に溜まり続けるどす黒い物がそろそろ限界だと叫んでいる気がした。
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