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「未来!ここにいたの?探したんだからね。今日は僕と一緒に帰る約束でしょう?」
俺の姿を見つけ笑顔で走り寄ってくる静流。
「わっ」
躓いて転びそうになるところを俺は慌てて受け止めた。
微かに香る甘い香り。
俺は息を止め不自然にならないように素早く身体を離す。
「そんなに走らなくても俺は逃げないんだから、もっとゆっくり来いよ。それともそんなに俺の事が恋しかった?」
冗談交じりにそう言うと静流は頬を薄っすらと赤く染め、ぷくりと膨らませた。
「またそんな冗談ばかり!恋とか愛とか僕たちには関係ないでしょ?」
ズキリ。静流の言葉が心を抉る。
そう、俺たちは親友だから恋とか愛とかそういうものは俺達の間には存在しない。存在してはいけない。
「まぁな。俺たちは親友だからな」
にっと無理やり口角を上げ笑って見せる。
静流も「そうだよ。僕たち親友なんだから」そう言いながらにっこりと微笑んだ。
好きなのに辛い。愛してるのに憎い。
静流は俺の事を―――俺たちの事を忘れてしまった。
傍にいられるだけでいいと思っていたのに、俺は目の前で笑顔を見せる静流の事をどういう感情で見ればいいのか分からなくなってきていた。
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