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花に酔う M
静流のメールに何だか胸騒ぎがして待ち合わせ場所に急ぎ来てみれば、教室中に強く香るΩのフェロモン。
きょろきょろと辺りを見回すがそこには静流とΩの子だけだった事にほっと安堵の息を吐く。
相手がΩなら静流は大丈夫だ。
どんどん強くなるΩのフェロモン。静流のとは違う甘すぎるフェロモン。
きつい匂いにくらりと頭が揺れた。
まるで乗り物酔いをしたような、そんな気持ち悪さだ。
俺はαで、番った今でも他のΩのフェロモンを嗅ぎ取る事ができる。
だけど、番以外のフェロモンは臭いだけでとてもじゃないが長く嗅いでいる事はできない。
それなのに身体は反応してしまう。
猛ってしまう自分の中心に吐き気を覚える。
「くそっ」
念のために抑制剤を飲んできたのに…っ!
このままでは俺がαだと静流にバレてしまう。
近くに立っていたはずの静流の様子もおかしくなり始めていた。
蹲り震えている。
いけない、俺のフェロモンに引っ張られて静流もヒートしかかっている…!
自分の事をαだと思っている静流はあれ以来ヒートなんて起こしていなかったのに。静流がヒートを起こしてしまったら俺は………!
もう二度と静流の事を傷つけたくなんかないのにっ!
俺は後先考えずに自分の腕に噛みついた。
「――――つっ!!」
痛みで少しだけはっきりしてくる頭。
俺は静流を抱え隣りの教室へと逃げ込んだ。
鍵をかけ自分に強めのα用の緊急抑制剤を打ち、静流にもΩ用の緊急抑制剤を打った。こういう時の為に俺は両方の抑制剤を持ち歩いていた。
「フーフーフーっ」
歯を食いしばり薬が効いてくるのを待つ。
先に薬が効いてきたのか俺の腕の中で静かな寝息をたて始める静流。
静流の規則正しい柔らかな呼吸に次第に俺も落ち着いてくる。
「よかった……」
安堵し強い薬の効果で眠気に襲われるが隣りの部屋で今もあのΩはヒート中だ。
このまま放置したらフェロモンを嗅ぎつけたαに襲われるかもしれない。
自業自得とも言えるが、後でこの事を知った静流が悲しい思いをする事がないよう手を打つ事にした。
今回の事に無関係じゃない高杉に電話で短く助けを求め、静流をしっかりと抱き込んだまま意識を手放した。
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