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 面会時間が終わった。この病院は午後の一時から六時までという決まりだ。手術の場合は特別に許されるからお父さんとお母さんは一日なにも食べずに病院に居る。心配でお腹も空かなかった。  病院のある駅前のビジネスホテルへ帰る。お母さんはベッドに座るとポロポロと涙を落とした。 「あと一年なんて、まだあの子、彼氏も作ったことがないのに」  お父さんはお母さんの肩を抱く。 「俺たちは実の親じゃないから生体肝移植も無理らしいしな。もっとも血管まで癌が広がっているなら無理だったかも知れないか。苦しまないでくれればいいが」  瑞香はお母さんの親友の子だ。親友は子供を産んですぐに膵臓癌になって死んだ。瑞香は癌家系なのだろう。お父さんはビジネスで成功していて貯蓄がたくさんあったので瑞香を引き取った。お母さんも不妊治療をしてたが子供を授からなかったので瑞香を喜んで受け入れた。二人は大きな家を建てた。瑞香が癌と知ったときお父さんは仕事をテレワークにして、いつも家に居られるようにした。コンサルタント会社だったので家でも十分仕事が出来た。
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