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 今日は雨だった。ホテルの窓は濡れている。お父さんは窓から外の街を見た。七階だからマンションなどの家の灯りが夜景となっている。傘を差す人々が小さな交差点を横断している。  瑞香も窓際のベッドだがカーテンが閉まっているので景色は見えない。寝ようと思ったがいつも横向きで寝ているので足に加圧機が付いていると仰向けになるので寝づらい。退屈なのでスマホを弄った。体は怠かったが脳は働いている。  病院は九時が消灯だ。病室には七十代のお婆さんと五十代の女の人が二人いる。お婆さんは六時半くらいから寝た。夕ごはんを食べて直ぐ寝息が瑞香のところまで聞こえて来た。  瑞香は目を瞑った。手術のときの明るい病室を思い出した。あんな明るいところでスッと意識がなくなるのは不思議だ。全身麻酔って凄いな。そう思っているうちに眠りについたようだ。気が付くと朝の五時だった。点滴の液体が増えている。寝ているうちに新しいものに換えたんだろう。  六時になるのを待ってイヤホンを付けテレビを点ける。ニュースをやっている。今日も雨だそうだ。ベッドに寝てるだけだから天気は関係ないが雨は気鬱になる。瑞香はチャンネルをBSに代えた。脳を冷凍保存させる番組をやっていた。冷凍保存か。もしも死ぬんだったらその方向も考えようかと思った。なんでも冷凍保存してその脳をデジタル化し、コンピューターにアップロード出来るらしい。パソコンやアンドロイドなんかに脳を埋め込んでもらえれば、百年以上も意識は生きられるんだそうだ。瑞香は死が怖くなくなった。瑞香は余命宣告を受けてないが昨日のお父さんとお母さんの様子から察していた。
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