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 三日後、お粥と味噌汁が許された。スプーンで掬ってお粥を口に運ぶ。瑞香は甘くて驚いた。食べてなかったから味覚が繊細になっていた。隣のお婆さんは今日も独り言を言っている。 「今日も缶詰か。甘たるくて嫌なんだよ」  瑞香は苦笑した。隣のお婆さんは乳がんだった。だから胃腸は丈夫なんだろう。でもお粥よりましだ。そういえばアンドロイドになったら食欲中枢はどうなるのだろうか。電気で動くんだろうが物を食べたいと思うのだろうか。  瑞香は緩和ケアを選んだ。だからあまり苦しむことなく一年後に死んだ。お父さんとお母さんは泣いた。あんまりだと思った。大学生の若さで死ぬなんて可哀そうだ。生きているときの希望はもちろん尊重した。だから脳は躊躇なく冷凍保存した。お父さんにはお金があった。コンサルタント会社は順調に行っている。ただちに親しくしているコンピューターの会社と精密機器の会社に連絡をした。タッグを組んでもらって、内密にアンドロイドを特注して瑞香そっくりにした。
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