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 その二年後、アンドロイドは瑞香として起きた。記憶も欠けず小さいときのことから死ぬまでのことを覚えていた。身体は人間と変わらない最高級なものにしてある。お父さんは持っていた財産だけでは足りず、膨大な借金を背負ったが瑞香が生き返ってくれたのでちっとも苦労とは思わなかった。家も手放して賃貸のおんぼろマンションに越した。  病気のため、大学一年生で学校に行かなくなったので、新しい大学を受験した。都内の有名な私立大学に受かった。今は五月だ。講義でよく会うルイスが瑞香に声を掛ける。 「もし、暇だったら、今日の夕ごはんを一緒に食べないか?ステーキなんでどうだ?」  瑞香は咀嚼して飲み込むことは出来るが消化は出来ない。口、食道、胃はあるのだが腸や肝臓、すい臓や腎臓といった臓器はない。だから食べたものは胃の下に付いたドアを開けて取り出している。パンツで隠れる場所ではないが皮膚が精巧なので裸になっても分からない。食べ物が勿体ないと思う人もいるだろうがアンドロイドだから仕方ない。家で充電してその電力で動いているのだ。
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