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「ステーキが嫌いだったら、寿司でもいいよ。ダメかな?」  ルイスはイギリスから中学の時に越してきた。日本語はペラペラで金髪に茶色い瞳の美男子だ。身長が百八十五センチあって顔が小さい。瑞香のことを人間だと思っている。 「いいよ。ステーキにしようか。六時に駅前のカフェで待ってるよ。ほら、エムズって白い外観のカフェ。分かるでしょ」 「ああ、六本木に行こう。予約しておくよ」  ルイスは口角をあげる。瑞香も笑みを浮かべて頷いた。お昼休みなので芝生の広場に置いてある白いベンチに腰掛ける。ルイスは隣に座ってショルダーバッグから雑誌を取り出した。 「ここのブランドのショップでアルバイトしてるんだよ。週に五日だけだけど、一人暮らししてるからお金が掛かるんだ。今日は休みなんだ。瑞香は自宅から通ってるんだったよね。バイトはしないの?」  ルイスはイギリスの有名ブランドのページを開いて言う。瑞香もバイトしたいがお父さんとお母さんに反対されていた。アンドロイドで生まれ変わったばかりだからだろう。でもお父さんが借金を返すため苦労しているのを知っている。本当は働いて少しでも手助けしてあげたいと瑞香は思う。  芝生にはレジャーシートを敷いた男子学生が寝転んでいる。鳥の鳴き声がする。雀が地面に着地して土の上にいる小さな虫をついばんだ。瑞香は目を細める。五月は好きな季節だ。
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