36.崩かイすル、そノ前ニ ・・・

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午後5時。いつの間にかこんな時間だ。 「婆ちゃん、今日は色々と話聞いてくれて有難う。そろそろ帰ろうかな。」 「そうかい。まあ、またいつでもおいで。」 そう言って祖母は少し寂しそうな顔を見せる。 「うん、また近々来るよ。有難う。」 真司は笑顔でお礼を言うと祖母に背を向けゆっくりと歩き出す。 「真ちゃん、人生色々よ。わかった?」 真司は振り返ってやや寂しそうな笑顔で返事をする。 「わかった。」 また真司は歩き出す。 再び背中越しに声をかけられる。 「焦りなさんなよ。」 また真司が振り向く。 「うん。」 次に背中を向けた瞬間 「死んだらいけんよ。」 これには振り返る事が出来なかった。とても優しく、温かい言葉だった。感極まった真司は言葉を発してあげる事が出来なかった。とめどなく涙が溢れた。祖母からは、ただ俯いて肩を震わせる真司の背中だけが見える。泣き顔を見られたくなかった。これ以上心配をかけさせたくなかった。真司は祖母に背を向けたまま大きく手を振った。 「もう大丈夫!!」 声を震わせながらも、何とか発する事の出来た唯一の言葉を祖母に残し、真司はその場を去った。
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