番外編:木霊

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番外編:木霊

「もうこんな時間か・・・」 喫茶店の柱時計が十四時を指し示している。 僕はカウンターから客席を見渡した。 (今日は珍しくお客様が少ないな) そうなのだ。いつもなら馴染のお客様で 朝から活気のある僕の喫茶店なのに 今日に限って異様に少ない。 (これはもしかして・・・) そう思っていると、店内にいたお客様方が 帰り支度を始める。 「ありがとうございました」 僕はこの時間最後のお客様のお会計を済ますと お辞儀をして見送った。 「おい、今日はやけに客の入りが悪いな」 そうつぶやいたのは、 カウンターの上に置いてある 椅子にこしかけたイギリス紳士の 人形に持たせている、 パイプの中の住人である 『狐火』だ。
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