番外編:木霊

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僕はボウルに卵と砂糖を入れて 手早く泡だて器で混ぜ合わせた。 そして日本酒を鍋に入れて火にかけ ひと煮立ちさせる。 鍋の日本酒をボウルの中に少量ずつ入れて 都度かき混ぜてからカップに注いだ。 「はい、母直伝の卵酒です」 ”ありがとうな” 叔父はマスクを外すと卵酒をチビチビと飲み始めた。 「叔父さん、それで今日は何の御用ですか?」 僕は尋ねた。 この叔父は、仕事に趣味にと忙しく最近は時候の挨拶を 交わす位だった。 (小さい頃はよく遊んでもらったな) 叔父は空になったカップをじっと眺めると ”すまん、実は” 「実は?」 と僕が言うと叔父は 「実は?」 と返してきた。
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