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「『狐火』って意思を持つものなのか?」
思わず声に出してしまった言葉に
「いや、普通は妖力の持った、
お狐様が発する火に過ぎない。
だけど俺には何故か意思がある」
そう言われて僕は困ってしまった。
『狐火』は他人から見れば
普通の『火』にしか見えない。
一歩間違えれば放火犯と間違えられる。
「君、どこか行くところある?」
「ないな。できれば俺のお狐様の
所に戻りたい」
その時僕は、祖父のパイプを思い出した。
そしてリュックからそれを出すと、
「君、この中に入れる?
僕は喫茶店をやっているんだ。
そこをねぐらにして、お狐様を探したらどう?」
「いいのか」
僕はうなずく。
そして『狐火』はひゅぅっとパイプの煙草の葉を入れる
ボウルの中に入り込んだ。
そして、白い煙の輪っかを一つぽわんと出した。
「礼を言うぞ。少し眠る」
『狐火』はそう言って黙り込んだ。
僕は困った。このままパイプを
リュックに入れていいものかどうかと。
僕は苦笑して、手に祖父のパイプを持って
歩き出した。
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