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面接ってこんなもん?
祖父の遺品整理を終えた帰りに
文字通り『狐火』を拾った僕は
祖父から受け継いだ喫茶店の
2階の自分の家に帰りついた。
『狐火』は意思を持っていた。
そこで、祖父の遺品のパイプの煙草の葉を入れるボウルに
入るようにしたのだが・・・。
どうも、『狐火』は、
『狐火』を発する狐の妖怪と
はぐれたらしいのだ。
「どうしたものかな」
僕は食卓の上にパイプを置いて
一人つぶやく。
「働くぞ。一宿一飯の恩は忘れぬからな」
「ああ、起きたの。それはありがとう。
でも君はそもそも、君の親になるのかな?
妖怪の狐を探さないといけないんじゃないかな」
「人間界では働くときに《きゅうけいじかん》や
《きゅうじつ》に《ゆうきゅうきゅうか》というのが
あるだろう。それを使わせてもらうから心配無用じゃ」
「僕の店は小さいから従業員を雇う余裕はないよ。
お給金を払うにしても君使えないし」
「毎日油揚げ一枚でどうじゃ」
「一枚?普通、お狐様にお供えする時
一枚さし上げるらしいのに、
その眷属になるのかな?
狐火の君に一枚は多くないか。
それにそんなに食べて太るというか
火が大きくなりすぎのでは」
「ちっ 最近の若造は知恵が回っていかん。
分かった、半分はどうじゃ」
「うーん。君の生態がよく分からないから
その半分、四分の一枚だね。
それで何か良い事をしてくれたら
ボーナスとして二分の一枚だ」
「まったく世知辛い店主じゃな」
「世知辛くて結構。
数字に厳しくお客に笑顔
それが僕の祖父のモットーだからね。
それより、今日はもう眠らせてもらうよ。
その前に、油揚げはないけれど
竹輪ならあるけれどどうする?」
「馳走になる」
こうして僕は奇妙な同居人を得ることになったのだ。
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