リコンシヨウ

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 日記の内容は、それこそ普通の恋人なら当たり前のように話すことばかりでしたね。    日常で感じたこと、デートで行きたいところ、最近夢中になっていること、欲しいお洋服、幼少期の思い出、家族のこと……。  最初は統一性のなかった日記の中身は、だんだんとあなたの好きな映画の話に引っ張られていくようになりました。  私は薦められるがままに、休みの日はあなたのおすすめの映画を見ることにしました。「ローマの休日」、「哀愁」、「雨に唄えば」……。古い映画が多かったですね(この年代の女性でゲイリー・クーパー主演の「真昼の決闘」を観たことのある人なんて私ぐらいなものじゃないでしょうか)。  中でも(敢えて作品名は書きませんが)、あなたの感想の熱量がすごかった映画がありましたね。  その日の日記にも書いていますが、人一人の存在がいかに尊いかを教えてくれる素晴らしい映画でした。  実はあの映画を見た後に泣いてしまったんですよ、私。  もちろん素敵なお話なので感動の涙でもあったのですが、あのお話に影響されてあなたのいない世界を想像してしまったんです。  あなたがいなければ、私はきっと、お話の中の女性と同じです。誰とも結ばれることはなかったでしょう。
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