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カチカチカチカチ……
静寂の空間には、タイプライターの音だけしか響かない。
〝さぁ、殺人ショーの開幕だ。今宵はどんな獲物を惨殺させようか。どんなに血肉を引き裂こうが、内臓を抉り出そうが、彼の苦悩は消息する事はないだろう。それは……〟
海岸の方から声が聞こえて来る。
久しぶりにこの島へ、獲物が上陸した様だ。
私はやれやれ、と立ち上がり小屋のドアを開けた。
**
「マジで無人島じゃん!」
「この島は今日一日、俺たちの貸切だぜ!」
「わー海も山もある!空気が澄んでる」
「ねぇ、大和!本当に私達だけの貸切なのぉ?」
大和は絵里の肩に腕を乗せながら「そうなんだぜ!すげーだろ!」と自慢げに言う。
海に一周囲まれた美しい無人島。
シルエットが三日月に見える事から〝三日月島〟と呼ばれる。この島から、三日月を見ながら永遠の愛を誓うと永遠に幸せになれると言う言い伝えもあるらしい。
この島は、一日一組限定で貸切が出来る。
キャンプをしたり、バーベキューをしたり、釣りなども楽しめる。自分たちだけのプライベートビーチ。非日常を味わえる最高の時間を過ごす事が出来る。
……と言われたのはだいぶ昔の話。
この島は行った者が帰って来ないと言われ、呪われた島となり来る者は居なくなった。
でも、時々遊び半分で若者が遊びに来る事がある。
今回もそんな曖昧な気持ちと、男たちの汚い下心が混じり合っているんだろうな、そう思うと吐き気がしそうになった。
「邪魔者は消去しないとな」
ポケットから古びた写真を出し、眺めた後また無造作に入れ込んだ。
彼らの前に姿を表す為、私は急いで山を降りて行った。
〝彼の復讐は……終わる事がないからだ〟
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