すまーとねこ

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 ピンポーン。    玄関のチャイムが鳴ったのと、息子のおむつを外したのが同時だった。おむつの中身は「大」。可及的速やかに対処しなければならない。  最近寝返りを覚えた息子はトレーニングに余念がない。横になるとすぐに寝返りを始める。たとえそれがおむつ交換の最中でも。 「あー! ダメ、そっち行かないで。床にくっつくから! あーっ!」  ピンポーン。  玄関のチャイムが再び鳴る。宅配便なら不在票を入れていってくれたらいいのに。いや、再配達のときに万全の態勢でいられる保証はまったくないけれど。 ――スマートスピーカー欲しいって言ってたろ? 珍しいスマートスピーカーを見つけたからレンタルしたんだ。今日届くから。  あ。  そうだ、ダンナが言ってた。  スマートスピーカーのレンタルなんて聞いたことがない。もしかして、メーカーの人が届けに来てるとか?  ピンポーン。  三度目のチャイムが鳴り響く。無理やりおむつを装着し、息子を抱えてドアホンにたどり着くと同時に通話ボタンを押した。  モニターには、猫が映っていた。 「おもうしこみいただきましたすまーとねこのおとどけです」  スマート猫? スマートスピーカーじゃなくて? 「ふくしまけんたろうさんにおもうしこみいただきました、すまーとねこです」  猫がダンナの名前を告げる。どうやらドアの向こうにいる猫自身が「レンタルしたスマートスピーカー」らしい。  いやいやいや。猫がスマートスピーカーってどういうこと? 訳がわからないままとりあえずドアを開けてみる。
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