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(14)
創はふと思い出して透を見た。
「さっきの、まじ?」
いきなり話を振られた透は、はあ? と首を傾げた。
「一緒に暮らすって話。あれ、本気なのか?」
なんだ、その話か。
透は丸め終わった餅を置き、ベッドに座っている創の横に腰を下ろした。
「母さんには、話した。N大が本命だから、家を出るのは確実だし、どうせならはじめと一緒に暮らそうと思うって」
「おまえ、受かる気満々」
「当然。落ちるわけがない」
さすがは学年首位。
自信たっぷりのそのセリフに創は呆れ返りつつも、実際受かることは確実だとは思っていた。
「ま、おまえと一緒に行くためにランク落としたしね」
「うわ、嫌味だ!」
「うるさい。それだけおまえに本気なんだよ!」
透は少し赤くなり、つられて創まで照れてしまう。
「だから……」
頬に手を掛けられ、創は口篭もった透が自分にキスするのだ、と思った。
……が。
「絶対受かれよ!」
デコピンしながらそんな命令が下されたのだった。
「痛っ……そんなん、わかんねーよ!」
「わかるさ。おまえは俺のこと愛してんだから。愛の力で絶対受かる!」
ぐっと握り拳を作って言う透に、創は上目遣いで、
「言ってて恥かしくねえ?」
頬を赤くしながら言った。
「恥かしく、ないよ。だって、ほんとだろ? はじめ、俺んこと好きだよな?」
有無を言わせない問い。
透のそれに、創は照れたまま口をへの字にして睨み上げる、という答えを返す。
「好き、だよなっ?」
そんな創を、今度は押し倒しながら問う。
「わかった、わかった。好き好き好き。だから、重いってば!」
「愛が感じられない」
「好きです!」
創は透の下から顔を持ち上げ、キスをしながら答えた。
「じゃあ、もっかいヤろ」
「ええ? おまえ、下にお母さんいるだろお?」
「大丈夫だよ。餅扱ってる時には絶対何も口出ししてこないからさ」
「そーゆーもん?」
「そーゆーもん」
結局二人はそのまま二回戦に突入し、つきたての餅と一個だけになってしまったおっぱい餅は、寂しく二人の喘ぎ声を聞いていた。
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